プレスリリースを確実にメディア関係者の元に届けるには、どのような点に注意すべきでしょうか?配信の方法や送付先の選定、配信する際に重視すべきポイントなどについて、具体的に解説していきます。
プレスリリースの送付方法はメールだけではありません。FAXや郵送、電話でもコンタクトをとることができます。いずれの方法でも、送付先のメディアによって適切な方法が異なるため、送付方法別の送り方の基本を理解しておく必要があります。
以下にプレスリリースをメディアに届ける方法を、送付先別に説明します。
FAXでプレスリリースをメディアに届ける際は「送付状」を別紙で送信しましょう。送付状を付けずに送付してしまうと、送付先部署や担当者などが分かりにくくなり、相手からマナーに反すると思われる場合もあります。
リリースに掲載した文字や図表が見えにくい場合も少なくないので、事前に社内で送付テストをおこなうことをおすすめします。
メールでプレスリリースをメディアに届ける際に最も重要なのは、件名です。件名だけで相手にプレスリリースのおおまかな内容を理解してもらえるようにしましょう。「〇月販売開始」「〇月×日に開催」といった具体的な日時や時期、注目してほしい情報などを件名に入れることで、メール本文を見てもらいやすくなります。
本文に添付ファイルの開封やリンクのURLへのアクセスを促す言葉があること、情報の解禁日時を明記していることも重要点です。
メールで送付する際のプレスリリース原稿の形式には、メールの本文に記載、添付ファイル、URLのリンクを貼付の3つがあります。プレスリリースの分量や内容に応じて、メディア関係者が便利だと感じやすい形式を採用しましょう。
郵送でプレスリリースを送付する際も、FAXと同様に「送付状」を同封しましょう。郵送時に折れたり、雨に濡れたりすることのないよう、クリアファイルに原稿を入れるほうが安心です。
相手のメールアドレスやFAX番号が分からない場合には、メディアの公式サイトなどに記載されている代表番号に電話で問い合わせてみましょう。
基本的に電話ではプレスリリースの詳細を伝えるのではなく、送付方法の確認だけにすべきです。電話でプレスリリースの内容を話すことは、相手の状況を考慮しない行動だと思われてしまいます。先方が希望する送付方法を尋ね、適切に対応しましょう。
プレスリリースのウェブ配信を代行するサービスが数多く提供されています。これらのサービスを利用すればテンプレートに情報を入力するだけで、各サービスに登録されたメディアアにプレスリリースが配信されます。また、配信とあわせて各サービスが契約している複数のニュースサイトにもプレスリリースが掲載されます。
メディアリストとは、自社がプレスリリースで配信したい内容と合致したターゲットを持つメディアをピックアップしたリストです。一般的にメディアリストには、以下の情報を記します。
・メディア名(番組名)
・担当者名
・連絡先(住所/電話番号/メールアドレス)
・プレスリリースの希望送付方法(FAX/メール/郵送など)
メディアの担当者と直接コンタクトが取れた際には、相手と話した内容や、そこで得られた情報、相手が求めている情報などをリストに書き加えていきます。
メディアリストを活用することで、メディアの担当者との信頼関係を深めるためのデータを蓄積することができます。プレスリリースに限らず今後の広報活動に大きなプラスになるものです。
自社のメディアリストを活用してプレスリリースを配信すれば、配信にかかるコストも最小限に抑えることができます。
初めてコンタクトを取るメディアには、まず公式サイトなどで公開されているメールアドレスや住所、FAX番号などにプレスリリースを送付します。その際、自社の配信する情報に合ったターゲットを持ち、配信する内容に興味を持ってもらいやすいメディアを選別することが重要となります。
メディアが取り扱っているコンテンツを確認すれば、どんなターゲットに向けたメディアなのか、どんなジャンルの情報を取り扱っているのかを知ることができます。自社の情報と合致するメディアを選んでプレスリリースを届けるようにすれば、有効なメディアリストを効率よく作成することができるはずです。
市販のメディア連絡先一覧を利用する方法は、最も簡単な送付先の選び方です。
下記の2点が代表的なメディア連絡先一覧です。
・広報・マスコミハンドブックPR手帳(2021年版)
・マスコミ電話帳2021年版
特定の地域でプレスリリースをメディアに届けたい場合、主要メディアが各地域に置いている取材拠点へプレスリリースを送付する方法が有効です。
全国紙と呼ばれる新聞社やNHKは、47都道府県全てに拠点があり、その連絡先は各社の公式サイトに記載されています。
「iタウンページ」を活用すれば、特定地域のメディア連絡先を簡単に確認することができます。プレスリリースを配信したい地域名と新聞社・放送局で検索すれば、その地域のメディア各社の住所と代表電話番号が表示されます。
・iタウンページ https://itp.ne.jp/
プレスリリースをメディアに届けたい地域で発行されている新聞を公共の図書館でチェックすれば、各新聞の地域面に地域拠点の住所・電話番号が記載されています。
記者クラブとは、公的機関や業界団体などへの継続取材のために構成されている任意組織のことです。新聞社や放送局などの記者がメンバーとなり、各省庁や政党、公的機関、東京証券取引所や商工会議所といった業界団体内に設置されています。
記者クラブに所属するメディアに向けて、企業や個人事業主が直接プレスリリースを届けることができます。この活動は広報の業界用語で「投げ込み」と呼ばれています。
記者クラブに向けたプレスリリースの手順と注意点を、以下に記します。
記者クラブにプレスリリースを提供する際には、事前に電話連絡をする必要があります。
記者クラブのある施設の代表番号に電話をし、記者クラブに取り次いでもらいます。電話に出た記者クラブの関係者にプレスリリースを提供したいことを伝えれば、訪問日時や訪問時の手順など必要事項を教えてもらうことができます。
プレスリリースの内容など尋ねられるケースもあるので、明確に対応できるようにしておきましょう。
事前の電話で、プレスリリースを持参できる曜日や時間帯、必要な部数を確認します。記者クラブごとにプレスリリースを届ける手順やルールが定められている場合もありますので、訪問日時などとあわせて確認しましょう。
事前に日時と必要部数を確認した上で、実際に記者クラブを訪問します。
記者クラブを訪問した際は、まず受付スタッフにプレスリリース提供のために訪問した旨を伝えます。スタッフがプレスリリース一式を受け取って各社に配布する場合が多いですが、許可を得た後にメディア各社ごとに設けられているボックスに訪問者自身が投函するクラブもあります。スタッフの許可なく勝手に投函しないよう注意しましょう。
まず基本知識として記者クラブの種類を知っておきましょう。記者クラブは、下記の3つの種類に大別されます。
1. 官公庁関連の記者クラブ
【代表的な記者クラブ】
・国会記者会館内「衆議院記者クラブ」
・総理大臣官邸内「永田クラブ」
・日本銀行内「日銀クラブ」
・東京都庁内「都庁記者クラブ」
2. 政党関連の記者クラブ
【代表的な記者クラブ】
与党・自民党や公明党を取材する「平河クラブ」
野党・立憲民主党や日本共産党などを取材する「野党クラブ」
3. 業界・経済団体関連の記者クラブ
【代表的な記者クラブ例】
日本鉄鋼連盟内「重工業研究会」
自動車産業を取材する「自動車産業記者会」
繊維・製紙業界を取材する「本石繊維会」
医薬品、医療、薬剤、薬局に特化したメディアが所属する「本町記者会」
主に銀行や保険会社などの金融機関を取材する「日銀金融記者クラブ」
東京証券取引所内「兜倶楽部」
民間企業がプレスリリースを届ける対象となるのは、主に3つ目の業界・経済団体関連の記者クラブです。
記者クラブの重要なルールのひとつは、メディア各社が公平に情報を得ることです。プレスリリースを提供する際も、記者クラブの加盟各社へ同時に配布することが求められます。提供する側がメディアを選別することは基本的にできません。
プレスリリースは単にできるだけ多くのメディアに届ければよいわけではありません。その情報に興味を持ち価値があると感じるメディアに届けることが、プレスリリースの最も重要な点です。ターゲットが合致していないメディアへどれだけ多くのプレスリリースを届けても成果にはつながりません。
自社の情報に興味を持ちそうなメディア、ターゲットが一致しているメディアにプレスリリースを届けることが、期待する成果を出すための絶対条件です。
プレスリリースを見てもらいたいメディア関係者に確実に情報を届けるには、新聞社名や放送局名だけを宛先にした送付は避けるべきでしょう。
新聞社であれば社会面、経済面、生活面といった各紙面の担当部署、放送局であればその局が制作・放送している番組の中から取り上げてもらいたい具体的な番組を選びその制作担当者を宛先に書き加えます。以前にコンタクトを取ったことのある担当者がいる場合は、その担当者名を記せばより効果的です。
プレスリリースの届け方や送付するタイミングは、個々のメディアによって希望する方法や時期が異なります。自社のプレスリリースに興味を持ってもらいたいメディアの希望する届け方を事前に把握できれば、相手の希望にできる限り沿った方法で送付しましょう。
何度かプレスリリースを届けた上で思うような結果が出ない場合は、送付方法やタイミングを変更することも検討すべきです。
一定期間プレスリリースをメディアに届けた結果、メディアからの反応が思うように寄せられない場合、下記のポイントを再チェックして問題点がないか検討しましょう。
・プレスリリースの送付方法はメディアの希望に即しているか
・自社のプレスリリースに合致したメディアに送付しているか
・プレスリリースの宛先を具体的に記載しているか
・送付するタイミングは適切か
・メディアが価値を感じるプレスリリースになっているか
・プレスリリースの文章や形式は適切でわかりやすいか
記者をはじめとしたメディア関係者がメールをチェックすることの多い時間帯の目安は、一日の中で下記の3つだと言われます。
・午前9~10時頃
・正午~午後1時頃
・午後5時~6時頃
メールがチェックされることの多い時間帯を踏まえて送信すれば、新鮮な情報として記者の目に留まりやすくなることが期待されます。
受信後にすぐ読むことができ、メモ書きすることもできるFAXの送信は、メディア各社の始業前や昼休みの後といった、記者が時間に余裕のある時間帯に合わせておこなうと効果的です。
郵送の場合は、メールやFAXと異なり、配信からメディアに届くまでにある程度のタイムラグが生じてしまいます。余裕を持って早めに送付することが重要です。
メディア各社には「締め切り」があり、締め切り直前は非常に忙しい状態です。当然多忙なタイミングでのプレスリリース送付は避けるべきで、締め切り後の業務が落ち着いているタイミングが送付に最適でしょう。
メディア各社によって締め切りのタイミングは多種多様ですが、一般的に以下の時期や時間帯が送付に適していると考えられます。
午後3~4時頃
番組放送の6~7時間前
・月刊誌 発売日前4~5日間
・週刊誌 発売日前日
大多数のウェブメディアには決まった締め切りがなく、随時コンテンツを更新しています。他のメディアのように送付のタイミングに留意する必要は特にないでしょう。
メディア関係者は毎日、相当数のプレスリリースを受け取っています。その中から自社のプレスリリースに興味を持ってもらうには、メディアの立場を理解すると同時に、相手に対する心配りも重要です。
メディアがどんな情報をどんなタイミングで得たいと考えているのかに注意を向け、数ある配信方法の中から、自社にとって最も有益なプレスリリースの届け方を探っていきましょう。
プレスリリースをメディアに届ける方法を社内スタッフだけで決めることが難しい、思ったような成果が出せないと感じた場合には、プレスリリースをはじめとする広報活動に精通したPR会社に自社の課題を相談することをおすすめします。