「PR」という言葉の正しい意味をご存じでしょうか?この記事ではPR(Public Relations:パブリックリレーションズ)の意味・定義から目的、種類、手法・ツール、手順までを、具体的に解説していきます。
PRは、Public Relations(パブリックリレーションズ)の略語で「組織を取り巻く個人や集団との良好な関係性の構築」という意味を持つ言葉です。PRの考え方や行動のあり方は19世紀末から20世紀にかけて米国で発展し、日本では第二次世界大戦後に普及しました。現在では、企業をはじめ官公庁や自治体といった公的団体や民間団体など、さまざまな組織の運営に必要不可欠な考え方として定着しています。
PRと意味や使い方が混同されやすい言葉に、広報や広告などがあります。そうした言葉とPRの主な相違点を以下にまとめました。
広報は、企業などの組織の情報を広く知ってもらうために発信する活動をさす言葉です。PRと同様の意味で用いられることもありますが、広報は発信中心でPRは双方向のコミュニケーション活動という違いで使い分けられます。
広告は、マスメディアやインターネット上の広告スペースを用いて、自社や製品・サービスをアピールする活動です。広告料金を支払うことで、アピールする内容や時期は希望通りのものにできます。
その点、PRではメディアのコンテンツを通して間接的にアピールする手法が中心になるため、希望通りの内容や時期に情報が発信されるわけではありません。しかし、メディアを介することで、情報の信頼度が増すという大きな利点もあります。
プロモーション(Promotion:販売促進)は、本来、広告や広報・PR、販売促進、人的販売などを含んだ広い意味を持つ言葉ですが、販売促進だけの意味で使われることが多くあります。消費者をはじめとする周囲との関係構築をめざすPRとは異なり、プロモーションは販売を促進すること、売り上げ増加を目的にして消費者に直接働きかける活動を意味する言葉として使われています。
マーケティングは、企業などが顧客との相互理解を深めながらおこなう、市場開拓のための活動全般をさす言葉です。商品やサービスが市場で求められている状態を作るため、PRや広告、プロモーション、市場調査といった多様な業務が含まれます。
PR活動の主な対象になるのは、企業を取り巻くステークホルダー(stakeholder:利害関係者)です。ステークホルダーには、消費者、マスメディア、株主・投資家、自社の従業員、協力会社、取引先、行政機関や金融機関、地域住民などがあります。
消費者への製品・サービス情報、自社のスタッフに向けた社内報、株主・投資家向けのIR(Investor Relations:インベスター・リレーションズ)など、それぞれのステークホルダーとコミュニケーションを図り、信頼関係を構築することがPR活動の最も重要な目的です。
企業が提供する製品やサービスが消費者のニーズに合致しているだけでは、消費に直結するわけではありません。その企業や製品・サービスに対して、消費者が信頼や親しみを感じていることが企業活動を成功させる必須条件になるからです。消費者や取引先から選ばれるためには、認知度や信頼感、親和性を高める必要があります。そのための活動がPRです。
PRの特徴のひとつに双方向性があります。PR活動には対象となるステークホルダーの反応を受信する姿勢、そのための仕組み作りも含まれます。ターゲットとの双方向的なコミュニケーションを実践することで、信頼関係を強化することができます。
PR活動の主なターゲットとなるステークホルダーから寄せられた意見などを真摯に受け止めた上で、企業運営や製品・サービスの改善に活用することも、PRの重要な目的のひとつです。
企業PRとは、企業理念や事業内容を正しく伝え、ステークホルダーとの信頼関係を強化することを目的としたPRです。
企業に好感を抱く消費者を増やすことは、販売促進だけでなく、採用活動や投資家からの関心を高める上でも効果が期待できる行動だと言えます。経営理念やユニークな取り組み、社会貢献活動などの情報を発信することで、自社の認知度や信頼感、親和性を高めることが、企業PRの軸となります。
商品PRでは、自社の製品・サービスの価値や特徴を伝えるだけでなく、企業PRと一貫性のある情報を発信することが重要です。
企業理念や事業方針と一致した製品、サービスを提供していることをPRすれば、消費者の信頼感をさらに高めると同時に、信頼や好感を自社に抱いた消費者が顧客になる可能性を高めることにもつながります。
戦略的PRとは、企業や商品・サービスが獲得したいと考えている目標の達成のために、企業としての戦略全体を踏まえて、最適なPR活動をおこなうものです。
戦略PRには活動のベースとなる戦略が不可欠で、経営戦略やマーケティング戦略との連携が必要となります。広報セクションだけでなく、経営企画やマーケティングの担当セクションを含めた全社的なプロジェクトとして取り組むべきPRだと言えます。
テレビや新聞・雑誌などのマスメディアを活用したPRの特徴は、信頼度と認知度の高さにあります。マスメディアで紹介されれば非常に大きな反響が期待できますが、情報の掲載までに時間がかかること、内容や掲載時期などの希望は基本的に受け付けられないことを知っておくべきです。
ニュースや情報バラエティなどの番組で企業が発信した情報が紹介されれば、多くの視聴者にアピールでき、放送後の反響もたいへん大きなものになることが予想されます。その半面、番組の視聴者が興味を持つニュースバリューやインパクトがある情報でなければ採用されることが難しいことも事実です。
マスメディアの中でも最も古い歴史を持つ新聞は、社会的な信頼度の高さが最大の特徴です。新聞記事として企業や製品・サービスが紹介されれば、「新聞記事に載っていた」という安心感と信頼感が生まれ、反響も大きなものとなることが期待されます。全国紙に加えて地方紙や業界紙などの新聞社も数多くあり、PRの目標に合ったメディアへの掲載を狙うことが可能です。
雑誌は読者層が年齢や性別、趣味、生活スタイルなどによって分かれているため、自社のターゲットに合致した雑誌を絞り込んで掲載を狙うことができます。PRのターゲットが明確な場合、高い効果を得ることができるメディアだと言えます。
いつでも情報を発信することができ、双方向のコミュニケーションにも適したWebメディアは、PR活動を実施する上でも他のメディアにはないメリットを持つ魅力的なメディアだと言えます。
1次メディアとは、情報の発信元となる記事が掲載されたWebメディアのことです。新聞社系や通信社系、テレビ系などがあり、信頼性が高くユーザーの目に留まりやすいメディアです。
企業や組織が独自に運営するコーポレートサイトやブログなどのWebメディアをオウンドメディアと呼びます。オウンドメディアの主な利点は、興味を持っている人に向けて自社の保有する媒体で情報を発信できることです。外部に依頼する必要がないため、すぐに情報を発信できるだけでなく、掲載内容をコントロールできるという利点があります。
Yahoo!などに代表されるポータルサイトを2次メディアと言い、1次メディアが発信したニュース記事やコラムなどが数多く転載されています。Webメディアの中でも最も多くアクセスされ、年齢や性別などの属性を問わず、幅広いユーザーに情報を発信することができます。
Twitter、Facebook、InstagramといったSNSでは、双方向コミュニケーションがたえず活発に行われています。SNS上では情報が瞬時に拡散されるため、SNSへの投稿をきっかけにして話題を集めた製品やサービスが数多く存在します。
YouTubeなどの動画共有サイトを活用すれば、比較的低コストで映像と文章によって情報を伝えることができるため、近年、企業や製品を紹介するPR動画を公開する企業が増えています。
イベントや社会奉仕活動を主催、後援することも、企業にとって重要なPRのひとつです。イベントに参加した人々や興味を持った人々に企業名が認知されるだけでなく、イベントや活動の内容から、企業に親近感や信頼感を持つ人々が増えることも期待されます。
プレスリリースは、新製品や新サービス、イベントなどに関する最新情報を提供する公式文書です。提供先は、テレビ局や新聞・雑誌社、ニュースサイトなどのメディアで、プレスリリースに興味を持ったメディアはプレスリリースを元にしてコンテンツを作成・発信します。メディアが紹介するニュースやトピックの素材となるものです。プレスリリースの配信は、企業の最新情報を広く世の中に伝えるための重要なPR手段のひとつです。
企業パンフレットは、企業理念や沿革、事業内容、組織図、製品やサービスなどの情報が掲載されたPRツールです。取引先や潜在顧客をはじめとしたステークホルダーに配布されます。最近は印刷物と併せてデジタル版の企業パンフレットを公式サイトなどに掲載するケースも増えています。
ニュースレターとは、自社で発行する最新情報を提供する小冊子のことです。ニュースレターを活用するポイントとしては、基本的にセールスや宣伝はしない、有益な情報を掲載する、会社情報を開示する内容にする、毎月1回や隔月など定期的にターゲットに送付する、などがあげられます。
社内報は社内の情報共有だけでなく、社員のモチベーション向上やコミュニケーション促進、会社理念の浸透などにも有効なツールです。
CSR(Corporate Social Responsibility)とは、企業の社会的責任の意味で、環境への配慮や地域社会への貢献活動などによって、ステークホルダーからの信頼を高める活動です。そうした活動をまとめたツールが、CSR報告書やCSRレポートといった名称で配布されています。
IR(Investor Relations)とは、企業が株主や投資家に対して財務状況など投資の判断に必要な情報を提供する活動全般を意味します。IR活動を通じて株主、投資家、顧客などと意見交換することで、信頼関係を構築・向上し、資本市場での評価を高めることにつながります。外部からの厳しい評価や批判を受けることで、経営改善のための判断材料とする場合もあります。近年、IR活動の一環として公式サイト上にIR専用サイトを作る企業が増加しています。
PR活動を開始する際には、業界や市場、競合他社に関する情報を収集した上で、自社の現状や具体的な課題などを分析・検討することが重要です。
現状分析の結果を踏まえ、PR活動を実施することでどのような成果を期待するのか、活動の具体的な目的は何なのかを明確にする必要があります。状況分析をふまえ、PRの目的を設定します。PRの目的は企業や内容によって様々ですが、前提は「ステークホルダーとの関係構築」であることを忘れないようにしましょう。
実施するPR活動の目的に沿った主なターゲットは誰なのか、そのターゲットはどんな属性を持っているのかを明確にします。主要なターゲットを絞り込むことが、適切な時期や手法を判断することにもつながります。
KPI(Key Performance Indicator:最重要評価指標)やKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標」といった指標を用いて、PR活動の評価基準や目標を設定します。KPIは業務レベルの具体的な目標設定に使用されることが多く、KGIは主に企業や事業部門全体の目標設定に使用されます。
設定した評価指標や目標指標に沿って、PR活動の成果を客観的な数値として測定します。効果測定の結果を詳細に分析することで、それ以降のPRの質を高めることができます。
自社の情報を消費者やメディア関係者、自社の社員、協力会社、取引先、株主などのステークホルダーに発信し、その反応を受信して企業運営の改善に反映させるPRは、企業にとって必要不可欠な活動です。
効果的なPR活動は、周囲の人々や組織との信頼関係を強化し、社内の目的意識やモチベーションの向上にも直結します。自社にプラスとなるPR活動を進める上で疑問や課題が生じた場合は、PRに精通したスタッフを擁するPR会社など、外部のエキスパートに相談してみることを検討してみましょう。