Clubhouse(クラブハウス)を企業の広報・PRに取り入れた3つの事例と、要点は?

2021年03月09日(火) PRのヒント

「Clubhouse(クラブハウス)」は、新たなSNSとして2021年1月下旬から話題となり、日本でも急速に広まったiOS専用アプリです。この記事では、Clubhouseをいち早く企業の広報・PRに活用した事例を3つご紹介。また今後の見通しについても考察します。

Clubhouse(クラブハウス)のトレンドは継続中

音声SNS・音声版Twitter等とうたわれるClubhouse。完全招待制というレア感も手伝って爆発的なブームとなりました。一時期よりその過熱ぶりは収まったように思いますが、日本国内の無料アプリランキングでは1位を獲得(2021年2月18日時点)しています。

LINEリサーチによる認知度調査では、Clubhouseはすでに66%もの数値を記録(2021年2月13日時点)しており、まさに急速なトレンドの拡大を示しています。

LINEリサーチ調べ_Clubhouse

芸能人やインフルエンサーによる利用が目立つClubhouseですが、これをいち早く取り入れた企業も出現しています。企業の広報・PRにClubhouseをどのように活用すべきか、その方法のヒントになる3つの事例を紹介します。

Clubhouse活用事例-1 : 食べチョク『農家漁師の井戸端会議 #食べチョクハウス』

株式会社ビビッドガーデンが運営するECサイト「食べチョク」は、Clubhouseにて『農家漁師の井戸端会議 #食べチョクハウス』をほぼ毎日配信しています。農家さんから直接食材を販売する「食べチョク」だからこそ出来ることとして、生産現場の実情や各地域の特性、旬の食材や美味しい食べ方などを生産者の方とともに発信。つまりユーザーとのコミュニケーションにClubhouseを用いた事例です。ラジオがそうであるように、音声メディアはリスナーとの心理的な距離が近く感じられる特性があります。毎回100~200名の人がルームと呼ばれる「会話部屋」にリスナーとして集まっているのも印象的です。

食べチョク_Clubhouse活用

Clubhouse利用の感想として、ビビッドガーデン広報の下村彩紀子氏に聞いたコメントがこちら。

「これまでのSNSと違って、一期一会を大切にできるSNSだと思っています。私たちがやっている農家漁師の井戸端会議『#食べチョクハウス』でも思わぬ出会いをきっかけにコラボ商品の企画が動き出しています。生産者さんとお話しするリアルイベントを催したことが過去にありますが、会場には農業に興味のある人しか来ませんでした。Clubhouseの場合はルームが開いているから聞いてみようといったハードルの低さなので、生産者さん自身がふらっと参加できるだけでなく、さらに幅広い方に聞いてもらえるのは今までになかったので、画期的だと思っています。」

ビビッドガーデンはあらゆる企業の中でもいち早くClubhouse利用を始めています。さまざまな人がふらっと参加できるプラットフォームとしての特性を最大限理解し、活用している企業であると言えそうです。また、一期一会の出会いをきっかけに新たな企画が動き出すのもClubhouseならではの現象と言えるでしょう。

Clubhouse活用事例-2 : ガイアックス『会社設立22周年パーティ』

株式会社ガイアックスは、例年本社オフィスビル内イベントスペースで開催している周年パーティを今年はClubhouse内で開催しました。ガイアックス代表執行役社長の上田祐司氏がモデレーターを務め、現在上場企業で代表を務めるガイアックス卒業生ら(アルムナイ)をスピーカーに迎えてトークを展開。Android端末ユーザーなどがClubhouseを利用できないことを踏まえ、FacebookとYouTubeでもライブ配信しました。これは社内外のコミュニケーションにClubhouseを用いた事例といえるでしょう。

ガイアックス_Clubhouse活用

ガイアックスの広報マネージャー高野比呂史氏に聞いた、Clubhouse利用の感想がこちら。

「加熱し始めた早いタイミングで実行に移せたのが良かったです。今では一定行き渡った感がありますが、当時は非常に尖った印象を与えられたと思っています。当社は起業家輩出企業ですが、起業家の皆様はとてもお忙しく、これまでイベントに参加いただくのは難しかった側面がありました。オンラインで、しかも音声のみでOKと参加ハードルを下げられた結果、過去のオフライン・オンラインイベントよりも多くの当社卒業生起業家に参加いただけました。気軽にトークの輪に入られ、とても盛り上がりました。」

過去のイベントよりもより多くの参加者を集められた事実は、音声だけ参加のClubhouseが肩肘張らず気楽に使えるツールであることを示しています。
※ちなみに、Clubhouseの規約では、すべてのスピーカーの同意なしに、録音や文字起こしなど記録は禁止されています。Clubhouse外の配信をおこなう際は、スピーカー全員に許可を取るようにしましょう。

Clubhouse活用事例-3 : ヌーラボ『採用イベント』

株式会社ヌーラボは、オンライン採用イベントをClubhouse上で開催。人事担当者および広報担当者による、採用に関するトークセッションを行いました。彼らが普段どんな業務に従事しているか、ヌーラボの雰囲気、働く環境についてなどをトピックに展開。Clubhouseリスナーである求職者にとっては、ヌーラボという企業をぐっと身近に感じられたことでしょう。

ヌーラボ_Clubhouse活用

ヌーラボPR担当の五十川慈氏から頂いたコメントです。

「ちょうど広報・人事職の募集を開始したタイミングで、求める人物像として『好奇心旺盛で行動力がある』というのも一つの要素でした。そのため、話題になっているものや新しいものに敏感な方にリーチしてみたいと思い、Clubhouseで採用イベントを開催しました。狙い通り、採用ターゲットのイメージに近い方から好反応がありました。当日参加できなかった方にも『アイデアをすぐ実行できる社風』『代表も参加してくれるという距離の近さ』などヌーラボの社風や文化的な魅力が伝わったようで、複数名から連絡をいただけました。」

既に採用イベント開催当時とは利用ユーザーの属性が異なるという判断により、ヌーラボは今後Clubhouseを用いた採用イベントなど行っていく予定はないとのことですが、雑談や自然な会話から文化が伝わるという可能性を感じたため、音声メディアを活用した発信をしていく可能性はあるかもしれないとのことでした。

ヌーラボ自身が、チームのコラボレーションを促進するツール「Backlog」「Cacoo」「Typetalk」「Nulab Pass」を開発・提供する企業ですから、今回のClubhouse活用は、最新オンラインツールを積極的に使いこなす企業というブランディングにも寄与した面がありそうですね。

3つの企業の事例から見えてくるClubhouseのベストな活用法は?

1.ユーザーとのコミュニケーション、2.社内外のコミュニケーション、3.採用のコミュニケーション。こうして見ると、企業のあらゆるコミュニケーション領域にClubhouseを利用できそうですが、やはり最適なのはユーザーとのコミュニケーションへの活用でしょう。音声SNSならではの特徴はリスナーとの距離の近さ、そして気軽さにあります。Clubhouseは中小規模のコミュニティ作りに活用するのがベストです。たとえばamakoujiという酵素ジェラートを取り扱っているブランドは、Clubhouseで1時間の情報発信したことでプロダクトを数十万円売り上げたことを報告しています。ライブコマースに近い活用法です。

こうしたClubhouseの特性から考えると、TwitterやInstagramのように大企業のアカウントが出てくる可能性は低いでしょう。企業名を挙げてのClubhouse活用は、走り出しの速いベンチャー企業が中心となり、大企業にとってはイベントやファンミーティング用にスポット活用する形で落ち着きそうです。

広報部・PRパーソンにとっては違う活用法もある

上記のとおり、企業としては必ずしもClubhouseを使いこなす必要はなさそうですが、広報担当者・PRパーソン個人としては、役に立つツールであることは間違いありません。代表的な活用法をご紹介します。

Clubhouseでメディア記者にネタ出しできる

アナウンサーをはじめ、メディア関係者もブームの早くから参加しているのがClubhouseの特徴です。特に広報・PRパーソンとして見逃せないのは、経済系メディアの記者を中心にClubhouse上で次の記事のネタを広く募集するルームを立ち上げている例が散見されること! 普段はなかなか繋がりを持つことが難しい記者とも繋がれる可能性がある、これはClubhouseの魅力の1つです。

Clubhouse上での「公開取材」という新たなスタイル

新聞記者を中心にClubhouse上での「公開取材」を行う例もしばしば見られました。「ルーム」は全世界の人にオープンなスペースのため、誰でも取材の様子を聞くことができます。「公開取材」を聞いたユーザーはその後実際の記事を見ようという気持ちにもなりやすいと思われます。広報・PRパーソンにとっては、例えば社長インタビューを受ける際など、記者に対してClubhouse上での公開取材を持ちかけてみるというのも、面白いかもしれません。

広報として横のつながりを増やす

企業の広報担当者として、広報担当者で集まって情報交換するためのルームを開いていらっしゃる方もいます。一人広報さんなど孤独なポジションに陥ることも多々あるからこそ、広報ならではの悩みや相談を、別会社の広報さんに相談できる場があるのもClubhouseの活用法の1つと言えるでしょう。

Clubhouseのブームが今後も続くかどうかは疑問ですが、トレンド・世論の流れを知っておくのは広報・PR活動の基本です。「Clubhouseとは何なのか?」「ウチの会社でもClubhouse活用できないか?」など、他人から聞かれた時には即答できるようにしておきたいですね。

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