PR Standard ―広報の基礎知識―

ニュー‌ス‌リ‌リー‌ス‌と‌は?‌プ‌レ‌ス‌リ‌リー‌ス‌と‌の‌違‌い‌や‌目‌的、‌書‌き‌方、‌配‌信‌方‌法‌を‌解‌説‌

2021-05-06 / by 安藤 英祐

企業が新しい情報を外部へ配信する「ニュースリリース」。プレスリリースと呼ばれることもありますが、配信方法の変化によってニュースリリースという言葉が使われるようになりました。

 

今回はニュースリリースとプレスリリースの違いに加えて、ニュースリリースを配信する目的、メリット、書き方や配信方法を解説します。配信前に知っておきたい注意点や対策すべきことも紹介していますので、今後のニュースリリース配信にぜひ役立ててください。

ニュー‌ス‌リ‌リー‌ス‌と‌は?

ニュースリリースの概要と、類語である「プレスリリース」「ニュースレター」との違いを解説します。

 

ニュースリリースとは企業が外部に情報を配信すること

ニュースリリースとは、企業の情報を外部に配信すること、または企業の新情報を記載した公的な文書を指します。ニュースリリースで配信される情報には、以下のものがあります。

 

・経営に関すること(役員人事、資金調達、決算報告、業績報告など)
・会社の動向(社名の変更、組織変更、オフィス移転など)
・社長からのメッセージ(年頭所感、災害時のお見舞いなど)
・導入事例(自社サービスを導入している企業の事例)
・社内制度や福利厚生について
・新製品や新サービスの発表や紹介
・展示会などへの出展について
・危機管理対応(不祥事への対応と謝罪、誤情報の訂正など)

 

ニュースリリースとプレスリリースの違い

ニュースリリースとプレスリリースの違いは、配信方法です。プレスとは「報道機関」を指します。ニュースリリースが企業の新しい情報を広く一般に告知する文書または方法であるのに対して、プレスリリースとは企業がマスコミ向けに新しく情報を発表すること、または報道発表向け文書を指します。

 

かつては企業が外部に新しい情報を発信すること自体を「プレスリリース」と呼び、ニュースリリースと同じ意味として使われてきました。以前は企業が新しい情報を広く発信したいときの手段がテレビやラジオ、新聞などのメディアを通すのが一般的であったためです。

 

現在はインターネットの普及によって、企業がマスコミを介さず自力で情報を配信できるようになりました。そのためマスコミを通じて発表する、「メディア向け」に特化した文書を「プレスリリース」、メディアを通じた方法に、公式サイトやSNS、オウンドメディアなど自力での配信手段を含め企業が新しく情報を「一般向けに」を配信することを「ニュースリリース」と呼ぶ場合があります。

 

・プレスリリース:メディアを通じて配信する企業の新情報、またはメディア向け文書(テレビ、ラジオ、新聞などを通じて配信)

・ニュースリリース:上記に加えて、企業が自力で配信する企業の新情報(テレビ、ラジオ、新聞などを通じて配信、公式サイトの「What’s New」「お知らせ」、SNSやオウンドメディアでの「○○オフィスが移転しました」などの企業の新情報の記事なども含まれる)

 

企業の情報発信の手段は自力での配信に加えて、以前からのマスコミを通じた発表も変わらず用いられています。そのため、プレスリリースとニュースリリースは混在して使用されることも多いです。

 

ニュースリリースとニュースレターの違い

ニュースリリース・プレスリリースはオフィスの移転、新商品発表、お詫びなど広く伝えるべき企業の新しい情報が書かれます。一方、企業としての新しい情報がなくても配信できるのがニュースレターです。

ニュースレターには決まった形式や手段などの制約がありません。「新商品の活用方法」「季節の事柄」など、読者に有益な情報などが内容として配信されます。新規顧客獲得や、既存顧客の定着を目的として配信される場合も多いです。

ニュースレターは、ニュースリリースと同じ構成で書かれる場合もあり、メディアへの配布もできます。顧客を含めた一般向け以外にも、メディアと企業の距離を近づける目的でも活用されています。

ニュースリリースの2つの目的

ニュースリリースを配信するおもな目的は以下の2つです。
1.ステークホルダーへの情報共有
2.会社の利益につなげる

順に解説していきます。

 

1.ステークホルダーへの情報共有

ステークホルダーとは企業の利害関係者のことです。一般の消費者、社員とその家族、投資家、株主、取引先などが該当します。ニュースリリースは、ステークホルダーに企業の新しい動向を簡潔に伝えるために配信されます。

メディアへの配信と同時に、企業の公式サイトやメールマガジン、SNS上でもニュースリリースを配信できます。これによりステークホルダーはいろいろなチャネルで、いつでも最新の情報を取得可能です。

 

2.会社の利益につなげる

ステークホルダーへの情報共有のために企業の新しい情報をニュースリリースとして配信した結果、ステークホルダー以外も企業の情報を入手することになります。会社の知名度向上や商品・サービスの売上アップなどの利益につなげるのも、ニュースリリースの目的のひとつです。

近年企業の新情報の配信方法の手段が広くなったことにより、より多くの人に企業の新しい情報が届けられるようになりました。ニュースリリースは継続的に配信できるため、企業や商品イメージのブランディングにも効果があります。

 

 

ニュースリリースを配信する3つのメリット

ニュースリリースを配信すると、ほかにも以下3つのメリットが得られます。

1.ニュースリリースがメディアに掲載される可能性がある
2.投資や業務提携のきっかけになる場合がある
3.低コスト、高い効果のマーケティングにつながる

順に解説していきます。

 

1.ニュースリリースがメディアに掲載される可能性がある

配信したニュースリリースがきっかけでメディアの取材を受けたり、メディアにニュースリリースがそのまま掲載される場合があります。メディアに取り上げられた場合、広告を打って宣伝するよりも高い信憑性を持って、企業の情報を一般に広く広められる効果があります。

メディア向けに配信したプレスリリースではなく、公式サイトやオウンドメディアに掲載したニュースリリースであっても、メディアからの取材につながるチャンスがあります。

 

2.投資や業務提携のきっかけになる場合がある

配信したニュースリリースから企業の動向を知り、投資先を探す投資家や提携先を探している企業から連絡が入ることがあります。投資や業務提携のきっかけになるのも、ニュースリリースのメリットです。

 

3.低コスト、高い効果のマーケティングにつながる

企業のPRには広告を配信する方法もあります。ニュースリリースは広告出展よりも低コストで配信できるため、継続的な配信も可能です。広告出稿よりも高い宣伝効果が得られたり、メディアに取り上げられる可能性もあります。

ニュースリリースの書き方とポイントを解説

ニュースリリースの作成には、以下の6つのポイントを踏まえておきましょう。
1.かならず入れる項目をチェック
2.冒頭は簡潔かつ目を引くものにする
3.本文は正確かつ具体的な内容を入れる
4.読み手の興味を引く表現を入れる
5.複数のテンプレートを使い分ける
6.図や画像を活用する

ポイントに沿ったニュースリリースの書き方を解説します。

 

1.かならず入れる項目をチェック

ニュースリリースには以下5つの項目をかならず盛り込みます。
①タイトル
②リード文(内容の要約)
③本文(特徴、背景、今後の展望を中心に)
④企業情報
⑤問い合わせ先

2.冒頭は簡潔かつ目を引くものにする

ニュースリリースの冒頭の印象によって、読者が最後まで読むかが決まります。タイトルは目を引く内容、リード文は「5W1H」をおさえた簡潔な文章を心がけましょう。リード文を読んだだけでニュースリリースの内容のほとんどが理解できる内容にするのが重要です。リード文で読み手に興味を持ってもらえれば、下の本文も続けて読んでもらえる可能性も高くなります。

 

3.本文は正確かつ具体的な内容を入れる

本文には特徴、背景、今後の展望を入れます。正確、かつ具体的な内容にしましょう。曖昧な表現は避けて、数字などのデータを活用すると具体性が増します。

例:「多くの人が良いと思っている」「ほとんどの人が満足した」→✕
「●●を試した方を対象としたアンケートでは、85%以上の方が『満足した』との回答を得ました」→〇

 

4.読み手の興味を引く表現を入れる

ニュースリリースは正確かつ具体的な情報を伝えるためのものですが、読み手に興味を持ってもらうための表現を取り入れるのも重要です。伝えたい新しい企業情報が、読み手にとって魅力のあるものとして映り、より自社に興味を持ってもらえるきっかけになります。

ポイントは、要所に「他にない、今までにない」情報であると判断されるフレーズを入れることです。

新しい、斬新と感じるフレーズ
・新発売
・新登場
・新開発
・○○初
・最大
・最小など

意外、珍しいと感じるフレーズ
・画期的
・新ジャンル など

他にない、唯一性を感じるフレーズ
・独特
・独自
・独創
・ターゲットを絞る(社会人1年生など)

記録や実績のあるフレーズ
・アンケート
・実績
・番付
・●●人達成
・●●人来場 など

 

5.複数のテンプレートを使い分ける

ニュースリリースは、自社サイト、オウンドメディア、新聞などのメディア媒体(プレスリリースとして)など、配信する方法や媒体が異なります。方法や媒体が複数ある場合は、ニュースリリースのテンプレートを方法や媒体ごとに作って、使い分けると効果的です。

 

6.図や画像を活用する

ニュースリリース本文には、文だけでなく図や画像も挿入しましょう。ニュースリリースをスマホで閲覧する人も多くなったためです。図や画像は鮮明なものにする、サムネイルも作ってタイトル横につけるなどの工夫で、どんな媒体からも読みやすいニュースリリースが完成します。

ニュースリリースの配信方法

完成したニュースリリースの配信方法として、以下の3つがあります。
1.リリースの配信サービスを利用する
2.メディアに直接配信する
3.SNSや自社サイトで配信する

 

1.リリースの配信サービスを利用する

リリースの配信サービスを利用して、ニュースリリースの配信が可能です。テンプレートに必要な情報を入力すると、配信サービスが提携しているニュースサイトにニュースリリースが配信されます。

配信サービスには、以下のものがあります。
・PR TIMES
・@Press
・Wired など

配信サービスによって特徴やコストなどが異なります。自社の事業分野や広報手段などに合うものを選びましょう。

 

2.メディアに直接配信する

新聞社、出版社、ウェブメディア、テレビ局などに直接ニュースリリースを届ける方法です。訪問、郵送、メールで添付、FAXなどでニュースリリースを配信しましょう。ほかの配信方法よりも手間はかかる一方、興味を持ってもらえたら取材を受けるなどのチャンスがあります。

 

3.SNSや自社サイトで配信する

自社アカウントのSNSや公式サイトのページでニュースリリースを配信する方法です。コストも安く、同じニュースリリースを継続して配信するうえでも有効です。手軽な一方、自社サイトやSNSに掲載されただけでは多くの人の目には留まりません。配信サービスなど、ほかの配信方法と併用するとより有効に自社の新しい情報を配信できます。

ニュースリリース配信前に知っておきたい4つの注意点

ニュースリリースを配信前に知っておきたい、4つの注意点を解説します。

 

1.取材やメディア掲載は確約されていない

ニュースリリースの本来の目的は企業の新しい情報をステークホルダーへ共有したり、利益につなげたりすることです。ニュースリリースを配信しても、かならずしもメディアに取り上げられるわけではありません。高いPR効果が得られる可能性があるのは、あくまで付帯効果というのを覚えておきましょう。

 

2.メディアを通じると企業側で情報操作ができない

ニュースリリースがメディアに掲載される場合、企業側から盛り込まれる内容や伝え方などを希望することはできません。メディアの記者側から見て、一般向けに有益な情報へ変換される場合もあります。ふだんからメディアの記者と友好な関係を築いておいたり、自社からの目線を保っておいたりするのが重要です。

 

3.情報は真実を伝えること

ニュースリリースは企業の新しい情報を、正しく伝えるのが目的です。企業に肯定的な印象を持ってもらえるようにと、情報を湾曲したり、虚偽を伝えたりするのは炎上の可能性があります。また、一度配信したニュースリリースを訂正する場合には、訂正として再配信したり、お詫びを掲載したりといった手間もかかります。

一度企業の手から離れて配信された後のことを考え、ニュースリリースは常に真実のみを伝えることを忘れないようにしましょう。

 

4.メディア掲載すると対応が多くなる場合がある

ニュースリリースがメディアに掲載されたり、取材を受けたりすると以下のような状況が発声する可能性があります。
・電話やメールによるお問い合わせの急増
・自社サイトへのアクセス集中
・店舗にお客様が押し寄せる
・商品の生産が追い付かなくなる など

問い合わせ対応や店舗でのオペレーションが追い付かない、自社サイトのサーバーがダウンする、商品が欠品するなどの事態が想定されます。増員や増産の対応をする、対応できるように従業員にニュースリリース内容を周知しておくなどの対策をあらかじめしておきましょう。

ニュースリリースは信頼構築とともにビジネスチャンスでもある

企業の新しい情報は、メディアを通じてだけでなく公式サイトやSNSなどでもニュースリリースとして配信できるようになりました。もともとステークホルダーと情報を共有し、信頼を構築させ利益にもつながるのがニュースリリースの目的です。配信方法が広まったことで、ニュースリリースは広告よりも高いPR効果が得られる可能性もあります。自社に合った配信方法で正しい情報を配信していけば、より多くの顧客を獲得したり、自社のブランディングができたりするチャンスもあります。

 

Tags: PRの基本

安藤 英祐

Written by 安藤 英祐

「PR」「広告」「WEBメディア」3領域でのビジネスキャリア保有。とくにデジタル領域の施策について知見あり。