プレスリリースをメディアに届けるために、多くの企業や団体が記者クラブへの投げ込みを行っています。とはいえ、記者クラブとはどんな組織なのか、記者クラブへのプレスリリースの投げ込みをどのようにすればいいか分からない広報担当者の方も多いでしょう。
そこで本記事では、記者クラブへプレスリリースを投げ込むメリットや方法、注意点を解説します。プレスリリースの記者クラブへの投げ込みにぜひ役立ててください。
記者クラブと投げ込みとは
プレスリリースをメディアへ届ける方法として、記者クラブへの投げ込みがあります。まずは記者クラブと投げ込みについておさえておきましょう。
記者クラブとは
記者クラブとは、テレビ局、新聞社などの大手メディアが中心になって構成される組織です。国会、警察などの公的機関や商工会議所などの団体組織のなかに設置されています。
おもな記者クラブには以下のものがあります。
・国会記者会館、日本銀行、裁判所などの官公庁関連の記者クラブ
・国会議事堂内のある政党関連の記者クラブ
・東京証券取引所などの業界や経済関連の記者クラブ
記者クラブは報道機関の記者が所属し、属している機関や団体の継続的な取材と情報収集、報道のための記事作成を行っています。一般的な報道機関は広く情報を取り扱う一方、記者クラブは属している団体や組織の情報を取り扱うのに特化しているのが特徴です。
公的機関や団体組織などは、秘匿性が高く自ら情報を積極的に公開しません。記者クラブは、非特定の高い対象に対して取材や情報収集を行い、情報を広く公開する目的で設置されています。
投げ込みとは
投げ込みとは、プレスリリースを直接記者クラブへ持ち込むことを指す業界用語です。
記者クラブへプレスリリースを投げ込む3つのメリット
記者クラブへのプレスリリースの投げ込みは、以下の3つのメリットが得られます。
1. メディアに取り上げられる可能性が高くなる
2. プレスリリースの内容に応じた記者クラブを選んでアプローチできる
3. 通常では接点が持てない記者にアプローチできる
それぞれ解説します。
1.メディアに取り上げられる可能性が高くなる
自社のプレスリリースを多くの人へ見てもらうために、自社サイトで公開する、プレスリリースの一斉配信サービスを使う、メディアに持ち込むといった方法もあります。
ところがプレスリリースを自社サイトに乗せただけでは、限定的な範囲でしか自社の情報を配信できません。プレスリリースの一斉配信サービスを使用した場合でも、メディアの目に留まらないとより多くの人に届けられないでしょう。
さらにメディアへ直接持ち込んでも、取り上げられる可能性は低いです。日々多くのプレスリリースが持ち込まれるため、メディアの目に留まる話題性や有益性が求められます。
一方、記者クラブは社会へ有益な情報を収集、公開するための組織です。記者クラブへ投げ込みをしたプレスリリースが社会への公益性があると認められた場合は、メディアに取り上げられる可能性が高くなります。
2.プレスリリースの内容に応じた記者クラブを選んでアプローチできる
記者クラブは、所属している機関や団体が多岐にわたります。官庁などの公の組織から、経済団体まであります。自社の事業やプレスリリースの内容に応じた記者クラブを選んで投げ込みができるのもメリットのひとつです。
3.通常では接点が持てない記者にアプローチできる
記者クラブに所属している記者とは、接点を持てる機会は多くありません。プレスリリースの投げ込みをすることで、一般的には接点のない記者と関係を持てるメリットもあります。
記者クラブへのプレスリリースの投げ込みにおける7つの注意点
記者クラブへプレスリリースを投げ込みする前に、覚えておきたい7つの注意点をご紹介します。
1.営利目的の宣伝は避ける
2.都会と地方どちらの記者クラブにするか考える
3.投げ込みのタイミングを考える
4.複数の記者クラブへ投げ込みするときは同一のタイミングにする
5.記者クラブ内のメディアを選定しての投げ込みはしない
6.あいさつ回り、名刺交換などは事前の許可を得る
7.正しい投げ込み方法を守る
それぞれ解説していきます。
1.営利目的の宣伝は避ける
記者クラブが求めているのは、公益性の高い情報です。営利目的での宣伝や広告を投げ込んでも、取り扱ってもらえません。投げ込みされた記者クラブ側に「社会に広く出すべき」と感じられたプレスリリースが、メディアに取り上げられます。
記者クラブへの投げ込みに向いているプレスリリースとして、以下のようなものがあります。
・地域を活性化させる商品開発(地域の特産品を使った商品、活性化に役立つアイディア商品など)
・社会や地域に貢献するイベント(地方への移住を考えている人と人手不足の企業をマッチングさせるイベントなど)
・社会課題を解決するための取り組み(SDGSの取り組みなど)
2.都会と地方どちらの記者クラブにするか考える
記者クラブは日本全国にあります。都会の記者クラブ、地方の記者クラブそれぞれに特徴があります。プレスリリースの内容や、自社の規模に応じて投げ込みする記者クラブを選びましょう。
都会の記者クラブは取り扱う情報量が多く、プレスリリースが取り上げられれば自社の情報を大きく広められる可能性があります。一方で投げ込みされるプレスリリースも多いため、取り上げられる確率も低めです。
地方の記者クラブは都会の記者クラブに比べると拡散しづらいものの、投げ込みされるプレスリリースの数は少なくなっています。自社の規模が小さい場合でも、地方の記者クラブに投げ込みをすると取り上げてもらえる可能性があります。
3.投げ込みのタイミングを考える
プレスリリースの投げ込みは、余裕を持って行うのが重要です。プレスリリースを取り扱うメディアが新聞などの場合、週1、月1などの取り上げ頻度の場合もあります。イベントの開催などプレスリリースの情報に時限がある場合には、最低でも1ヶ月前には投げ込みをするようにしましょう。
記者クラブに投げ込みをするタイミングとしては、平日の10時ごろ、または14~15時ごろがベストです。官公庁の発表が多い金曜日や、夕方18時の発表に向けた準備で忙しい夕方は避けるようにしましょう。また、記者クラブによっては投げ込みの受付をしている時間帯が決まっています。
4.複数の記者クラブへ投げ込みするときは同一の情報、タイミングにする
ひとつの記者クラブではなく、複数の記者クラブへプレスリリースを投げ込む場合もあります。その際は、記者クラブ間で内容やタイミングを差別化せず同一の情報、タイミングで投げ込みをしましょう。
5.記者クラブ内のメディアを選定しての投げ込みはしない
記者クラブはテレビ、新聞、ラジオなどのいろいろなメディアの記者が集まっています。記者クラブのなかで、プレスリリースを取り上げてほしいメディアを選定することはできません。ひとつの記者クラブのなかで、どのメディアにも平等に投げ込みをしましょう。
そのため、「テレビに取り上げてほしい」などでメディアを選定したいときは、記者クラブへの投げ込みではなく、プレスリリースをメディアに直接持ち込む方がよいでしょう。
6.あいさつ回り、名刺交換などは事前の許可を得る
記者クラブへプレスリリースの投げ込みで訪れた際には、今後の記者との良好な関係を築くためにあいさつ回りや名刺交換をするのも有効です。ただし、記者クラブによってはあいさつ回りなどが禁止されている場合があります。投げ込み方法を確認するときに、一緒にあいさつ回りなどは可能かどうかも確認しておきましょう。
7.正しい投げ込み方法を守る
記者クラブによって、投げ込み方法や受付時間などが異なります。投げ込み先の記者クラブごとの投げ込み方法を確認し、正しい方法を守るのが重要です。間違った方法で投げ込みをした場合、ブラックリストに載って記者クラブに出入り禁止になるリスクがあります。
次に記者クラブへの投げ込みの方法を解説します。
記者クラブへ投げ込みする方法を解説
記者クラブへの投げ込みは、以下の手順で行います。
1.投げ込みする記者クラブを決める
2.投げ込みの方法を確認のために連絡をする
3.投げ込みに必要な準備をする
4.投げ込みをする
1.投げ込みする記者クラブを決める
まず、プレスリリースを投げ込みする記者クラブを決めましょう。自社の事業やプレスリリースの内容に合っている組織、都会か地方かなどが、投げ込み先を決めるポイントです。日本全国の記者クラブの所在地などの情報は、「広報・マスコミ ハンドブック PR手帳」で調べられます。
2.投げ込みの方法を確認のために連絡をする
投げ込みをしたい記者クラブが決まったら、投げ込み方法を確認するために電話で連絡をします。コロナ禍の影響でプレスリリースの投げ込みを受け付けていない記者クラブもあるため、確認も含めて一度電話をしましょう。記者クラブへ直接電話する場合と、毎月持ち回りで記者クラブを仕切っている幹事社に直接電話する場合があります。また、記者クラブによって連絡先が異なるので、確認しておくようにしましょう。
電話では投げ込みの方法、必要部数、投げ込み日時を確認します。相手側の負担にならないように、端的に内容を話すようにしましょう。このとき、プレスリリースの投げ込みが宣伝目的だと思われると断られる場合があるため注意が必要です。
3.投げ込みに必要な準備をする
必要部数のプレスリリースのほか、会社案内や広報担当者の名刺なども添えて投げ込みをすると、後日連絡を取りやすくなります。ただし、プレスリリース以外の投げ込みは禁止されている場合もあります。投げ込みの方法を確認するときに、添付資料なども投げ込み可能かどうか確認してきましょう。
4.投げ込みをする
必要部数のプレスリリースを持参し、受付をしている時間に記者クラブへ足を運んで投げ込みをします。投げ込みは専用ポストにする方法、事務員に渡す方法などがあります。記者クラブごとに決められた方法や手順を守るようにしましょう。
投げ込みができる代表的な記者クラブを紹介
企業のプレスリリースの投げ込み先として、代表的な記者クラブを5つ紹介します。
兜倶楽部
「兜倶楽部」とは、東京証券取引所のなかにある記者クラブです。新規上場企業や株式に影響のある出来事の記者会見、企業の決算発表などの取材や情報収集を行っています。金融や株式に関する企業や団体のプレスリリースの投げ込みも行われています。
東商記者クラブ
「東商記者クラブ」とは、東京商工会議所のなかにある記者クラブです。小売や通販、信販、食品に関する企業がプレスリリースの投げ込みを行っています。
重工業研究会(重工クラブ)
「重工業研究会(重工クラブ)」は、鉄鋼会館内にある記者クラブです。日本鉄鋼連盟などが運営しています。鉄鋼、化学、非鉄金属、鉱業、製薬、ゴム、セメント、化粧品などに関連する企業のプレスリリースの投げ込みが多く行われています。
本町記者会
東京都千代田区神田岩本町にある記者クラブです。医薬品や医療、薬局や薬剤を取り扱うメディアの記者が在籍しています。医療や薬剤関係のプレスリリースの投げ込み先として選択肢に入ります。
自動車産業記者会
名前の通り、自動車産業に関連する取材や情報収集を行うメディアが所属する記者クラブです。
記者クラブへのプレスリリースの投げ込みは適切な方法とタイミングで
今回は記者クラブへのプレスリリースの投げ込みについて、メリットや方法を紹介しました。記者クラブへの投げ込みは企業のプレスリリースを取り上げられる方法のひとつですが、内容には公益性が求められます。
企業の利益を目的としたプレスリリースの場合は、投げ込み以外の方法を検討しましょう。公益性のある内容なら、記者クラブへの投げ込みは有効な手段です。プレスリリースの投げ込み方や投げ込む前に知っておきたい注意点をおさえて、検討してみるとよいでしょう。