自社の事業内容や新商品、新サービスについて広く配信するための手法にPRがあります。PRでは、広告とは異なる手法で自社の情報配信が可能です。
自社のPRをしたくても具体的な方法が分からないときや、PRの効果が実感できないとき、選択肢になるのがPR会社への利用です。この記事では、PR会社と広告代理店との違いに加えて、PR会社の業務内容、依頼するメリット、依頼前に知っておきたいポイントや注意点を解説しています。
これからPR会社への依頼を検討している方、PR会社と広告代理店どちらを利用すべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
PR会社とは?広告代理店との業務内容の違い
まずはPR会社が業務として行っていることと、広告代理店との違いについて解説します。
PR会社とはPRを代行またはサポートする会社
PR会社とは、企業などのPRの代行またはサポートを業務としている会社を指します。PRとは、”Public Relations”の略で、企業などの組織と、組織を取り巻く利害関係者(ステークホルダー)との良好な関係の構築および維持をするための考え方や活動のことです。
組織の理念や主張を利害関係者から理解や賛同を得るため、または組織の理念や主張を実現するための計画や取り組みなど示して協力を得ることもあります。
PR会社と広告代理店の違い
広義のPR、または和製英語のPRには「自分のよいところをアピールすること」「自己を宣伝すること」という意味があります。そのため、PR会社は広告代理店と混同される場合が多いです。PR会社はPRを行うのに対して、広告代理店の業務は広告を打つことになります。
広告代理店は、企業などから依頼を受けて広告の作成からメディアに広告が掲載されるまでの手続きが業務内容です。テレビをひとつの例にすると、PR会社はテレビ番組に自社の情報や商品が取り上げられるようにサポートをします。一方、広告代理店はテレビCMを作成し、テレビで放送されるようにするのが業務です。
自社の情報をどのように配信するか、目的や依頼内容によって、PR会社と広告代理店どちらに依頼すべきかが異なります。どちらがふさわしいかを選ぶためには、PRと広告それぞれのメリットとデメリットを把握しておくのが重要です。
PR会社と広告代理店どちらに依頼すべき?
PRと広告の特徴は以下の通りです。
PR |
広告 |
|
内容のコントロール |
✕(内容はメディア側に一任される) |
〇(企業側が内容に対して希望を出すことができ、反映される) |
費用 |
〇(広告宣伝費用がかからない) |
✕(広告宣伝費用がかかる) |
拡散力 |
△(メディアに取り上げられれば大きな拡散になるが、必ず取り上げられるわけではない) |
〇(短い時間で広く情報を拡散できる) |
話題の持続性 |
〇(段階的に自社の情報を広げるのに有効) |
△(広告の効果や話題性に左右される) |
PRはコスト面や持続性で大きなメリットがある半面、かならずしもメディアに取り上げられる可能性がないのがデメリットです。
一方で広告はコストがかかりますが、情報を迅速に広く配信できます。PRと広告は両方を併用することもできるため、配信したい情報の内容や目的に応じて、柔軟にどちらの手法を用いるかを決めましょう。次に、PR会社の業務内容について解説します。
PR会社に依頼するとできること
PR会社が実際に行っている業務について解説します。
市場や競合リサーチ
PRに活かすために、市場調査やマーケットの声を調査します。調査方法はWebアンケートや消費者の座談会の企画などです。市場だけでなく同業他社や競合に対する調査も行い、PRに活かします。
情報戦略の構築
PRを行ううえでの情報戦略を構築します。
PRメッセージの作成
PRには人の心を動かすメッセージ性も求められるため、情報に創造性を加えて共感や理解、興味関心などを得られるメッセージを作ります。
プレスリリースの作成と配信
プレスリリースの作成、およびメディアへの直接配信もPR会社が行います。必要に応じた記者クラブへの投げ込みも可能です。
メディアキャラバンの実施
メディアキャラバンとは、各メディアをひとつずつ訪問して回ることです。PR会社がメディアリストを作り、ひとつずつコンタクトを取ります。アポイントが取れたら訪問し、リリース内容の説明や商品、サービスのデモンストレーションなどを行い取り上げてもらえるように交渉します。ほかにも、企画の持ち込みや取り上げられる可能性のヒアリングも行います。
記者発表会の開催
新商品やブランドの立ち上げ、新事業展開時の記者発表もPR会社が開催します。
記者懇談会の実施
メディア関係者を集めて、記者と担当者が密接なコミュニケーションが取れるように記者懇談会を実施することがあります。
PRイベントの企画と実施
情報を広く伝えるための、プロモーションを目的としたPRイベントの企画および実施もPR会社の業務です。トレンド情報を扱う、タレントを起用するなどでイベントを作り上げていきます。
PR活動
PR会社の活動には、以下の4つがあります。
1.新聞にアプローチする新聞リーク
2.報道、ワイドショー、バラエティ番組、ドキュメンタリーの4つに分かれたテレビPR
3.SNSやWEBメディアを使ったデジタルPR
4.SNSでバズる動画作成や、ユーチューバーを起用したタイアップ動画作成などの動画PR
このように、PR会社では戦略やPRしたい内容、目的に応じてさまざまなPR活動を行います。
コンテンツ制作
CMやメールマガジン、キャンペーンサイトなどPRのコンテンツ作成もPR会社が行っています。
クリッピング
クリッピングとは、メディアに取り上げられた記事の保存や放送された番組の録画を指します。保管した内容を次のPRに活用するためです。PR会社がクリッピングを行う場合と、別会社に依頼する場合があります。
タレントのキャスティング
タレント事務所やモデル事務所、ユーチューバーやインフルエンサーの事務所と交渉して、PRタイアップやイベント出演の交渉を行います。
PR会社の種類
規模や業務内容によって、いろいろなPR会社があります。PRの内容や目的、自社の事業に応じたPR会社を選ぶのが重要です。PR会社の種類とそれぞれの特徴を解説します。
対応範囲では「総合」「専門」の2種類
PR会社の対応範囲で分類すると、総合PR会社と専門PR会社の2種類に分かれます。総合PR会社はさまざまな業務や業界に対応しているPR会社です。
一方、専門PR会社は業務、業界を限定しているPR会社を指します。業務はプレスリリース関係のみ、WEBPRのみなど。業界は不動産、美容、医療などのPRに特化しているなどです。業務や業界の幅が狭まる分、一定の分野に特化している強みがあります。
幅広いPR業務を任せたいときや、自社の事業内容やサービスによって業種が異なる場合は総合PR会社、業務や業種に特化したPRがしたいときには専門PR会社が選択肢になります。
企業体型では「広告代理店傘下」「独立系」「外資系」「小規模」の4種類
PR会社の企業体型では、大きく分けて「広告代理店傘下」「独立系」「外資系」「小規模」の4種類があります。
広告代理店傘下のインハウスPR会社もあります。なかには広告代理店とセットで依頼を受け、インハウス案件以外は受けていない企業もあります。PRと広告両方を併用したいときなどに向いています。
広告代理店には属していないのが独立系PR会社です。専門性の高いPR会社は独立系が多くなっています。広告代理店傘下よりもコストをおさえられる場合が多く、フットワークが軽く柔軟性が高い会社も多くなっています。
アメリカや中国などの外資系PR会社もあります。資本規模が大きいほか、国外へのアウトバウンドのPRに強いのが特徴です。国内外問わずPRをしたいときに選択肢になります。
1~数人で運営しているのが、小規模のPR会社です。かつて記者だった人がフリーになる、大手広告代理店などから独立するなどで設立された会社が多くなっています。コストが安いところが多いです。
PRをPR会社に依頼する3つのメリット
自社のPRはPR会社を利用しなくても配信可能です。一方、PR会社に依頼することで効果的なPRにもつながります。PR会社を利用すると、以下3つのメリットがあります。
1.広告費をかけずに広報活動ができる
2.自社の強みや弱点が客観的にわかる
3.対象に応じたアプローチができる
それぞれ解説していきます。
1.広告費をかけずに広報活動ができる
自社の情報を伝える手法として、広告があります。ただし広告を打つには、多くの費用が必要です。PRでメディアに取り上げられれば、広告費をかけずに大きな宣伝効果が得られます。
PR会社はメディアに取り上げられるための戦略やコンテンツ制作を行うだけでなく、メディアに人脈も持っています。PR会社に依頼することで、ローコストで自社の情報が露出される可能性が高くなります。
2.自社の強みや弱点が客観的にわかる
PRは企業側で情報をコントロールできません。PR会社にPRを代行またはサポートを依頼すると、内容に干渉しないことで自社の商品やサービスを客観視できるようになります。自社では分からなかった、商品やサービスの強みや弱点などの気付きにつながるのもメリットです。
3.対象に応じたアプローチができる
PRは広告のように瞬間的な情報の拡散力はない一方、長期的に消費者をはじめとした利害関係者と良好な関係を構築、維持するのに有効です。一方的に情報を配信する広告と異なり、PRは長期的なファンづくりを期待できます。PR会社に依頼することで、消費者、取引先、従業員、投資家など、多岐にわたる対象に合わせた効果的なアプローチができます。
PR会社に依頼するときの3つのポイントと注意点
PR会社を利用すれば、PR面でも多くのメリットが得られます。PR会社は多岐にわたるため、PRの目的や自社の事業に合った会社を選ぶのが重要です。PR会社選びにも役立つ、依頼前に知っておきたい以下3つのポイントと注意点を解説します。
1.PRに求める業務をカバーしているか
2.費用対効果に合う契約方法を取り入れているか
3.KPIを明確に提示できるか
1.PRに求める業務をカバーしているか
PR会社によって特徴が異なります。たとえば規模が大きい広告代理店傘下のインハウスPR会社は幅広いPR業務をカバーしている一方、コストが高い、広告代理店の利用が前提などのデメリットがあります。独立型の小規模PR会社を利用するなら、自社の業態やPRに求めることに合致しているPR会社に依頼するのが重要です。
PR会社によっても、得意としている業界や業務が異なります。業界は自社の事業に合致しているか、業務はPRに求める目的を考慮し、PR会社を選びましょう。たとえば「PRの戦略を立ててほしい」「PRのゴールが知りたい」ときは、コンサルや戦略に特化しているPR会社が選択肢になります。「現場の記者との関係がほしい」「柔軟性を求める」場合は現場に強いPR会社、「企業内にPRのノウハウを残したい」ときはOJTに特化しているPR会社というように、PRに求める業務に強みがあるかもPR会社選びのポイントです。
2.費用対効果に合う契約方法を取り入れているか
PR会社に依頼する場合、以下3つの契約方法があります。
・長期契約である「エージェント型(リテナー)」
・業務や期間を限定して依頼する「スポット型」
・イベントや記者会見のみを外注する「イベント契約」
契約方法によってコストと契約期間が異なります。PRの用途に合った契約方法を取り入れているPR会社を選びましょう。たとえば長期的に戦略PRをするならエージェント型、通常の広報は社内で行い、新規事業や新商品発売などのタイミングで効果的に広報活動をしたいときなどのスポット型が向いています。
3.KPIを明確に提示できるか
PR活動は広告に比べてメディアに取り上げられる、利害関係者の心を動かすかなど不透明な要素が多く、効果が可視化しにくくなっています。PRの効果を実感できる指標となるのが「KPI」です。KPIを具体的に提示できるPR会社なら、どの程度の効果が出たか、ゴールまであとどのくらいかが把握できます。もしもKPIを達成できなかった場合の対応なども合わせて確認すれば、より自社のPRに合ったPR会社選びにつながります。
PR会社は自社のPRの味方になる存在
PRと広告では情報の配信方法、業務内容が異なります。まずは配信したい内容や自社の業務、コストや期間などに応じて、どちらが有効かを選択する必要があります。PRの業務を自社で行うことも可能ですが、PR会社に依頼するとより効果を期待できます。広告との併用も可能なため、業務内容や強み、契約方法などを確認したうえで相談する会社を選びましょう。